スラドによると、2001年に策定されたUltra SCSIの最終規格、Ultra327680がついにリリースされたとのことです。
まあエイプリルフールネタなのですが、しかしこのネタ元となったPC Watchの記事によると、本当にそのような企画自体は存在していたそうです。
筆者が入手した2001年3月2日付けのSTA非公式資料「SCSI Roadmap for the Future」(01s001r2)によれば、「ムーアの法則に打ち勝つためには、SCSIも2年に2倍のペースで高速化を続けなければならない」と記載されている。
もちろん冗談半分だろうが、そこには2021年のUltra327680 SCSIまでロードマップが示されている。
しかし、この元ネタとして記載されているSTA Tech 01s001r2なる資料、本当に実在したのでしょうか?
SCSIってなに?
Small Computer System Interfaceの略です。
USBより昔に存在した、外付けハードディスクやディスクドライブ、プリンタ等を接続するケーブルの一種です。
でかい。
こいつの繋ぎ方はデイジーチェーン接続というものでした。
つまり、PCと機器ABCがあった場合、ハブでPC←→ABCとくっつけるようなことができず、PC←→A←→B←→Cと並べて繋げていく必要がありました。
さらに末端にはターミネータというダミーの回路を刺しておかなければなりませんでした。
面倒ですね。
しかし、そのような面倒にもかかわらず大いに普及しました。
当時はIRQという制限があって拡張機器の追加が困難だったのですが、SCSIはIRQひとつで複数台の機器を接続できるという大きな利点がありました。
また競合規格に比べて遙かに高速だったこと、そもそも競合がほとんどいなかったことなどが原因です。
しかしその後IRQの問題は別の仕組みにより解消され、USBやATAも高速化が進んだことなどにより、SCSIの利点は失われていきました。
最終的には取り回しが楽なUSBに取って代わられ、ほぼ消滅しました。
もっとも物理的には消えたとはいえ、通信プロトコルとしては現在も生き残っており、USBやSATAでもSCSIコマンドが今なお行き交っているそうです。
Ultra SCSIってなに?
SCSIが初登場したのは1986年。
古い規格であるため、速度は遅いです。
具体的には秒間5メガバイトです。
でも10年も後の1996年に登場したUSB1.0は1.5MB/sだったので、それよりも早いんですけどね。
当時としては相当な高速だったとはいえ、流石にそのままではデバイスの高速化についていけなくなったため、何度も拡張が繰り返されました。
1994年のSCSI-2では10MB/s、そして2000年に登場した最終規格のUltra320では320MB/sもの速度を出すことができました。
USBがこの速度に追いついたのは2008年なので、速度的な優位は最後までSCSIが持っていたといっていいでしょう。
現実ではUltra320でおしまいでしたが、今後の妄想ロードマップによると、
・2003年のUltra640で640MB/s
・2005年のUltra1280で1.28GMB/s
・2007年のUltra2560で2.56GB/s
・2009年のUltra5120で5.12GB/s
・2011年のUltra10240で10GB/s
・2013年のUltra20480で20GB/s
・2015年のUltra40960で40GB/s
・2017年のUltra81920で8GB/s
・2019年のUltra163840で160GB/s
・2021年のUltra327680で320GB/s
とムーアの法則に挑戦する勢いで速度が伸びていく予定でした。
Ultra327680
文字どおりに取れば327680MB/s、つまり327GB/sです。
2016年に敷設された海底ケーブルFASTERが7500GB/sであり、Ultra327680はFASTERの1/20程度の速度ということになります。
個人用途でこの速度。
やべえ。
でも逆に言うと、冗談で言っていた夢技術Ultra327680ですら、現実では超えられているってことですよね。
裏付け資料がない
困ったことに公式で調べても、いっこうに資料が出てこないんですよ。
https://www.t10.org/ftp/t10/から直接過去の資料を見ることができます。
1994年からの資料が大量に置いてある、たいへん興味深い資料集です。
ところがこのリストにはどうも01s001r2も01s005r2も見当たりません。
右側の棒グラフについては01-155r0および01-232r0に掲載されているのを発見しました。
いずれも下部のシグネチャが違うので別の資料のようで、何度も繰り返し使用された様がうかがえます。
現実がUltra320で終わったことを考えるとこちらも大概なグラフですが、それでも右側の一番大きいところでも6GB/sでありまだ常識的な範疇です。
というか実際SCSIの後継的な規格であるSerial Attached SCSIが既に2.4GB/sと、かなりいいところまで行っていますからね。
さらに別の資料01-107r0においては、Multilevel SCSIなる謎技術で高速化のとんでもない前倒しが行われていました。
もちろん画餅に終わったわけですが。
しかしUltra327680については、結局裏付けとなる資料を見つけられませんでした。
01-155r0や01-296r0において言及されているので、01s001r2が存在したこと自体は確かみたいですが、肝心の01s001r2そのものが見当たらないという。
PDF片端から見ていったんだけど見つけられず。
誰かかわりに探して。
ていうかT10の資料やばい
過去の資料眺めているだけで時間が溶けますよ。
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